「元少年と同じようなことをした私の体験」のオーマイニュース記者氏にメールしてみた

メールしてみた経緯

元少年と同じようなことをした私の体験 - OhmyNews:オーマイニュース
このエントリについては、アップから2日遅れた4月27日に、はてなブックマークと、リアル友人のid:staki氏のブログエントリで知った。
既にはてブでは、記者の無反省さや客観性の欠如、性犯罪被害者への配慮の欠如を非難するコメントが数多くついていたのはもちろんのこと、市民記者しか書き込めない元記事のコメント欄でも、記事を掲載した編集部の意図を疑問視したり、削除を求めたりする書き込みが続いていた。また、それらに対するカウンター的なコメントや、編集部の回答も出始めていた。
ここで気になったのが、これだけ(非難が大多数とはいえ)注目を集めているのに、元記事を書いたオーマイニュース市民記者である昿野洋一氏から何のコメントもないことである。*1
「本人降臨マダー?」ではないが、なぜあのようなエントリを書いたのか、反応に対して何かコメントはないのか、まずは単純に聞いてみたいと思った。また、彼の真意なり何なりが多少とも引き出されれば、恐怖や怒りを覚えた多くの人も元エントリを冷静に見られるようになるかもしれないとも思った。

オーマイニュース市民記者は直接連絡お断り

オーマイニュース内に記者への質問フォームなどがあれば、それを利用するのが早道と思われる。が、オーマイニュース内には昿野氏のプロフィールの記載もなく、また連絡先も見当たらない。
サイト内をあちこち探ってみたところ、市民記者または市民記者希望者向けと思われるページに次のような記載があった。

市民記者Q&A - OhmyNews:オーマイニュース
Q.市民記者に連絡を取りたいがどのようにすればいいの?
A.直接連絡を取ることはできません。特定の市民記者の方と連絡を取りたい場合は、総合窓口(omnj-info@ohmynews.co.jp)にご連絡ください。また、オーマイニュースと市民記者の方々がやり取りする「公開編集掲示板」を用意する予定です。

以上のとおり、オーマイニュース記者には直接連絡を取ることが「できない」。Q&Aの他の項目を見ても、編集部が記者をしっかりガードするから安心してお書きなさい、というニュアンスの説明が多いことから、これは技術的制約や、誹謗中傷が多いので仕方なくといった理由によるものではなく、オーマイニュースがユーザを「記者」として位置付ける以上、一般のメディアの記者と同等に扱いたいというポリシーなのだろう。*2
総合窓口があるからそこを通せというのはいいが、編集部は掲載判断の正当性を強調しているので、記者に回すまでの間や、記者からの回答がこちらに届くまでの間で、何らかのバイアスが生じそうだ。それに何より、まどろっこしすぎる。

Googleで検索したら…

何の気なしに「昿野洋一」で検索したところ、昿野氏本人と思われる同姓同名の人物が、いくつかのサイト(ブログ)を開設しているのを見付けることができた。*3
著述業や士業などの名前を売ることが商売でもない人が、実名と思われる姓名(少なくともオーマイニュースでの記者名と同じ姓名)でサイトを開設していること自体もレアケースだが、さらに驚くまいことか、昿野氏はプロバイダのメールアドレスと、自宅の住所まで掲載していた。
市民記者として書いた記事に対して予想される批判や非難に対して、逃げ隠れする意図が昿野氏にもしあるならば、このようなことはしない筈である。従って直接メールを送れば、何らかの反応が得られるかもしれないと考えた。

最初のメール

とはいえ、見知らぬ人物(ましてやこちらは(ここへの公開を最初から考えていたので)ハンドルネームのみ)の突然のメールだから、読まずに破棄される可能性も高いし、一読して気に入らなければ、即ゴミ箱行きになる可能性も高い。
最善を尽くす意味で、それなりに礼を尽くした文面にしようと思ったら、次のような大昔のメーリングリスト文化のような妙に下手に出たようなメールになってしまった。

宛先 kouno@y3.dion.ne.jp
日付 2008/04/28 12:37
件名 「元少年と同じようなことをした私の体験」に対するネット上での反応について
送信元 gmail.com
オーマイニュース市民記者 昿野 洋一 様
はじめまして。ハンドルネームkyo_juと申します。
インターネット上の「はてなダイアリー」において「Gandhara番外地」というブログを開設し、あわせて、「はてなブックマーク」で「kyo_juのブックマーク」という、ネット上に公開されたニュース記事や他の方のブログにコメントする形のミニブログのようなものをやらせていただいております。
※Gandhara番外地 http://d.hatena.ne.jp/kyo_ju/
※kyo_juのブックマーク http://b.hatena.ne.jp/kyo_ju/
昿野様のメールアドレスにつきましては、オーマイニュース上で市民記者に直接連絡を取る方法が見あたらなかったため、失礼ながらGoogleで検索させていただきました。あしからずご了承くださいませ。
さて、オーマイニュースで先日発表されました昿野様の記事「元少年と同じようなことをした私の体験」については、記事のコメント欄でも、記事そのものや、記事を掲載したオーマイニュース編集部への批判的な意見が多く寄せられており、こちらは昿野様もお読みになられていることと思います。
私の活動範囲である「はてなブックマーク」では、それ以上に多数のコメントが寄せられており、更には、こうした言論に対してどういう態度をとるべきかという議論にまで発展しています。
下記のURLをご参照ください。
はてなブックマーク - 元少年と同じようなことをした私の体験
はてなブックマーク - はてなブックマーク - 元少年と同じようなことをした私の体験 - OhmyNews:オーマイニュース
(以下、コメントのいくつかを要約し紹介--中略--)
ここまで批判一色になってしまうのは、まず「昿野様の記事全体が過去の性犯罪未遂体験を正当化し、性犯罪に走る男性を正当化し、女性の側の気持ちを考慮に入れていないように読めてしまうこと」が原因だと思います。
また、オーマイニュースのしくみ自体が、記者が批判的意見に対してすぐに対応できるようになっておらず、読者との対話をしないで、一方的に自分の言いたいことだけを書いているように見えてしまうことも、批判が集中しやすい原因だと思います。
そこで、昿野様にご提案したい事項が二点あります。
まず、ご自分の過去の性犯罪未遂体験や、現在起こっている性犯罪事件について「今」どう考えているのか、また、ご自身は性行為についてどうあるべきと思っているのか、オーマイニュース記事または何らかの別の手段を用いて、発表することをお奨めします。
それが、昿野様の記事によって生じた反発や恐怖を少しでも和らげることになると考えるからです。
また、オーマイニュース記事のコメント欄や、はてなブックマークで寄せられている意見に対して、編集部任せにせず、ご自分で何らかの形で返事を書き、発表することもお奨めします。
人間は、コミュニケーションの不可能な存在に最も恐怖や不安を感じるものだと思います。昿野様がご自身の考えを、他の人たちとの対話の中で表明されることで、おのずと昿野様の人となりがわかり、主張も理解されていくのではないかと思います。
以上、お初にお目にかかるのにもかかわらず、不躾かつ偉そうな意見を述べてしまい、大変申し訳ありません。
何ほどかでも参考にしていただければ、幸いに存じます。

長文なせいで読まれない可能性もある…と送ってから思ったが、後の祭り。*4

最初のメールへの返信

返事は来ない可能性の方が高いな…と思っていたら、その日のうちに返信が来たのでやや面食らった。*5

差出人 a262689850
宛先 kyoju1977
日付 2008/04/28 21:07
件名 Re: 元少年・・・に対するネット上での反応。昿野
kyoju1977様へ
はじめまして
昿野洋一(こうの よういち)です。
メールありがとうございます。
しかし、メールの内容はほとんど読んでいません。(他の批判も知りません)
批判があることは最初から分かっていますし、それについて反論する気もありません。(理解してもらおうと思って書いたわけではありませんし)
昔は地球は平だと信じられていたように時代によって人の考え方は違います。ですから大多数が正しいとは思いませんし、大多数が賛同するような記事を書いても意味がないと思っています。
これからもこのスタンスを変えるつもりはありません。
不快になるなら読まない。これが私の答えです。
*********************
昿野洋一(こうの よういち)
〒731-0142
広島県広島市安佐南区高取南2−33−11
Eメール kouno@y3.dion.ne.jp
*********************

………。
ある意味予想通りというか、「それならこのメールも無視すればいいのに…」と言いたくなるような返信だが、ゼロ回答なのにあえて返事を書いてくるというのは、それなりに何か感じたところがあるのかなとも思った。
それにしても、はてなブックマークについては存在も知らない人の方が多いだろうからまだしも、自分の記事のコメント欄すら見ていない、知らないというのは大したスルー力ではある。
また別の面の感想として、見知らぬ無名人の私にすぐにレスを返してくるあたり、これまでの記事(いじめ告白など)も含めて、これまであまり直接メールによる反応が無かったのかなとも思った。

2通目のメールとその返信

「理解してもらおうと思って書いたわけではありません」と言い切る頑なさ、また、それとメールには即返信してくる奇妙な律儀さとの同居は、自分にはかなり理解しがたいものに思えた。
そこで翌朝、更なる質問とメールの公表許可依頼を兼ねて、2通目を送ってみた。

宛先 a262689850
日付 2008/04/29 9:09
件名 お返事ありがとうございました(Re: 元少年…に対するネット上での反応)
送信元 gmail.com
オーマイニュース市民記者 昿野様
昨日メールさせていただきましたkyo_juです。
まずはお返事くださったことに感謝申し上げます。見知らぬ他人がいきなり送りつけた失礼な文面のメールですから、正直、無視されても仕方のないことと思っておりました。
批判にいちいち反論したり、理解を求めるつもりはないとのご見解、それも一つの立場だろうとは思います。また、ネット上で何を読むかはユーザの選択に任されている訳で、「嫌なら読むな」というのは、一つのネットマナーではあると思います。
ただ、ネット上で自分の意見を社会に公表する意義は、それによって社会に影響を与えることと、自分の意見に対する反応を読んだり、それに応答したりして、自分の糧とすることにあると私は思っていました。
昿野様が記事を書いた目的が、社会(国の政策を含む)への影響力や自分の意見に対する反応を求めてのことでないのなら、どういった動機にもとづいて書かれたのか、正直教えていただきたいです。
文学作品や芸術作品として世に問うのであれば、あえて人々に衝撃や嫌悪感を与えることが目的だったり、あるいはそんなことは無視して淡々と自己を表現すること自体が目的だったりするのかもしれませんが。
ところで、昿野様のメールの文面を、私のはてなダイアリーまたははてなブックマークで公表してもよろしいでしょうか。(もし不可であれば、昿野様とメールのやり取りをしたことと、内容の要旨の公表に留めます。)
この点だけでもお返事いただければ、幸いです。どうぞ宜しくお願いします。

規則正しい生活をしている人のようで(外回りが多い職業に就いているようなので当然か)、今度も昨日と同じ時間帯にメールが返ってきた。

差出人 a262689850
宛先 kyoju1977
日付 2008/04/29 20:56
件名 Re: 元少年・・・に対するネット上での反応。昿野
kyoju1977様へ
昿野洋一(こうの よういち)です。
いただいたメールは読んでいません。
まずkyoju1977様がブログに掲載されたのは、kyoju1977様が勝手にされたことで私がとやかく言う立場にはありませんし、kyoju1977様のブログに参加する気もありません。
kyoju1977様に不都合があるのならブログから削除されればいいのではないでしょうか?
私にとって無意味なことに時間をとられるのは迷惑です。
今後はメールをいただいても読みませんし、返事はしませんのでご了承ください。
*********************
昿野洋一(こうの よういち)
〒731-0142
広島県広島市安佐南区高取南2−33−11
Eメール kouno@y3.dion.ne.jp
*********************

「それならこの返事自体も出さなきゃいいのに…」と思わせるメールなのは前と同じだが、「いただいたメールは読んでいません」と言いながら、公表許可の件についてはややピント外れながらも辛うじて答えている。
とはいえ、「無意味」「迷惑」だとまで断言されてしまえば、さすがにこれ以上メールを送ってみても、実のあるやり取りは不可能と考えざるを得ない。

3通目のメール

そこで、その日のうちに最後のメールを送った。
受信時に標題だけを見て削除される可能性が高そうなことから、用件そのものを標題に記載しておいた。

宛先 a262689850
日付 2008/04/29 23:10
件名 了解しました。4月30日中に連絡がなければ、メールをブログに掲載します。(Re: 元少年…に対するネット上での反応。昿野)
送信元 gmail.com
昿野さま
kyo_juです。
あなたの書かれた記事の意図や、あなたの文筆活動の目的に関する私の質問に答えるおつもりがないとのこと、残念に思います。
しかし、「私にとって無意味なこと」と言われるのなら、仕方のないことと思います。
ところで、誤解があるようですが私は現時点では、昿野さまのメールをブログに掲載しておりません。
さきのメールは、掲載の可否を確認するためのものでした。
しかし、「kyoju1977様がブログに掲載されたのは、kyoju1977様が勝手にされたことで私がとやかく言う立場にはありません」という文言から、ブログへの掲載は差し支えないものと判断します。
従って、明後日(5月1日)に、私のブログに、昿野さまとのメールのやり取りの文面を掲載いたします。もし掲載しないことを希望される場合は、4月30日中にメールでご連絡をお願いいたします。
では。今後のご活躍を祈念しております。

掲載拒否の連絡については、4月30日と指定したものの2〜3日は待つつもりでいたが、予告どおり返信はなかった。
そのうちこの件に費やす気力が失せてしまい、ついつい今日まで公表が延びた。

とりつく島はなくもないかも?

完全に無視されるとか、罵倒が返ってくるよりはましだったが、やはり大方の「こんなこと書く人はこうだろう」という予想範囲内の返事しか返ってこなかったように思う。これは大方の人たちからすると「それ見たことか!」という結果ではあるだろう。
また、私としても、「理解してもらおうと思って書いたのではない」のなら何のために発表したのか、また昿野氏自身が本当に今でも過去の性犯罪未遂行為をしごく当然の行為だと思っているのかそれとも意図的な釣りなのか…等の疑問点を残したまま終わったのは、最初からあまり期待はしていなかったけれどもやはり残念である。

もっとも、「昔は地球は平だと信じられていたように」とか「大多数が賛同するような記事を書いても意味がない」などと言うあたり、昿野氏は他者を拒絶しながらも、心の底では真の理解者、少数具現の士を求めていると思わせる節はある。
もし仮に、既にそのような人が公開された昿野氏のメールアドレスや住所を介して氏の前に現れ、メールや手紙でディープでホットな意見交換が展開されたとしても、それはWeb上には現れてこないだろう。Web上に現れる言論は、人々の経験や思考の恐るべき多様性からすれば、ほんの氷山の一角でしかない…そんなことを思った。

*1:そのためか、はてブでは昿野氏の実在を疑問視する声(例えば、いわゆる「釣り」記事用の偽名ハンドルではないかとする指摘など)も挙がっていた。

*2:それにしても、こういう事項は一般読者向けのFAQでも周知するべきだと思うが。

*3:そのサイト自体も興味深いものがあったが、ここでは言及しない。

*4:なお、「主張も理解されていくのでは」というのは、肯定的・否定的どちらの理解にしても、この記事だけがポンと投げ出されている現状よりは、昿野氏と何らかの対話が成立した方がより深まるであろうという意味。(単に理解というと、肯定的な理解だけを意味しているように取られがちなので注記。)

*5:文中に昿野氏の住所やメールアドレスが記載されているが、Web上で本人が既に公表している情報なのでそのまま掲載する。